車椅子旅行の贈り物: 旭山動物園の二人
前回、「受援力」が車椅子旅行の贈り物のキーワード(車椅子旅行の贈り物: 「心」は強化出来ます - 車椅子旅行は楽しい!)だと書きましが・・・
その後、吉田穂波さん(■『受援力』について - 吉田 穂波)の言葉をきちんと咀嚼しないまま、彼女が提唱する『受援力ノススメ』を紹介してしまったのではと、心が波立ちました。
そして・・・
1) 「女子力」など、「~~力」という言葉が嫌いで
2) 「支援(力)」と「受援(力)」の関係は、ニワトリ卵。どちらが先にアプローチするかは重要ではないと思っているが
3) 「支援」行為は、災害・介護、いずれの現場でも、社会制度の中にすでに組み込まれているので、往々にして、先に「支援力」が行使されるのが当然とされており(上から目線のケースも多々あり)・・・
4) ゆえに、支援と受援の立場は現在は対等ではなく・・・
などとぶつぶつ言い始めていた時、信ちゃん(夫)がシンプルに思い出させてくれました。
「旭山動物園であ・の・無敵なボランティアの二人に会っていなければ、僕たちの車椅子旅行は今とは違ったものになっていたよ」
そうでした。
当時信ちゃんはまだ電動車椅子ではなく、坂の多い旭山動物園を見学するには、私一人で車椅子を押すのは無理でした。さあ、どうしましょう。
その時の顛末を「初めての自分たちだけの国内旅行:北海道 (1) - 車椅子旅行は楽しい!」で書きました。
旭山動物園!
ボランティア!
共に初体験!
何を期待してよいか分からない!(などと考えた割には、下心ありありの、手土産を東京から持って行きました)
信ちゃんはどうだったのかなあ? 私は、旭山動物園の入り口で二人を待ちながら、緊張していました。
手土産を渡すと「ありがとうございます。他のボランティアとお昼に頂きます」と笑顔で受け取って下さいました。
ほっ! 出足は好調?!?
園内に入ってすぐ、二人は時計を見て、
「後5分で白くまのショウが始まるので、行きましょう」
もちろん、異論はありません。
その後も、次々と効率よくさまざまなショウの場所を回り、お昼の時間となりました。レストランの前に来て、昼食を招待しようと誘うと
「お弁当を持ってきていますから、1時間後にまたここで会いましょう」と軽やかに立ち去りました。
午後も、テキパキ私たちが見学したい、体験したいと思っていた事をすべて、ガイドして下さいました。
「どうしてこのようなボランティアを始められたのですか」など、私たちの質問にはきちんと答え、こちらから自己紹介する話を楽しそうに聞く以外、「どうして車椅子になったのか」「これまでどのような仕事をしていたのか?」など、詮索するような質問は一切ありませんでした。
聞かれたのは、入園前に「何時のバスで帰られますか?」だけでした。
車椅子を押して貰っている事に私たちが一瞬でも、「負い目」を感じることはありませんでした。
初体験で「無敵なボランティア」に出会い、「ボランティアの底力」を体験する幸せに恵まれた私たちは以降、機会があれば旅先でボランティア・ガイドをお願いしています。いつも楽しい出会いになります。
それに何がありがたいと言って・・・みなさん、信ちゃんが突然「トイレ」に行きたいと叫んでもすぐに、居る場所から一番近いトイレに速攻で案内して下さいます。「地図が読める女」と自負している私ですが、初めての場所は距離感をつかむのが難しく、二人だけだと信ちゃんによく「トイレ、まだ?」と言われてしまいます。
旭山動物園のボランティア初体験は、幸運に恵まれました。無敵の「支援力」を持つ二人の支援が受けられました。
サポートを素直に受け入れる心(受援力)を強化する第一歩になりました。
この間、「フィッシュ・アンド・チップス」はおいしくないと友人に言われたから、イギリスに行っても食べなかったと書かれた記事を読みました。イギリスの国民食です。確かに美味しくない店もありますが、地方のパブの「フィッシュ・アンド・チップス」にあまりはずれはありません。ボランティアと「フィッシュ・アンド・チップス」を比べたら怒られそうですが、食べず嫌いは「損」ですよね。
(2010年5月)
