車椅子旅行の贈り物: 最上川舟下りから始まりました。
車椅子旅行の贈り物・・・
旅を重ねるたびに、プレゼントの山が高くなります。そ・し・て・・・
「これまでのプレゼントで一番うれしいのは何?」 と聞かれたら、
「いろいろな場所で出会う、いろいろな立場の方、特にボランティアの方々の好意を素直に受けとめ感謝する『心』を会得した事」・・・だと答えます。
説明が必要ですよね。
すみません。話がポーンと飛びますが、ほんの7,8年前まで、東横線の自由が丘駅にはエレベーターがありませんでした。都内でも有数の駅だと盲目的に過信して、事前のチェックを怠りました。
自宅から甥っ子に、自由が丘の叔母の家まで車で送って貰った帰り、「送らなくていいよ。東横線で一本だから」と言い、駅まで到着してびっくり。東横線のプラットフォームは2階でした。
改札口の駅員さんは慣れたもので車椅子と見ると、「ちょっと失礼します」と言い、しばらくして3人の駅員さんと戻って来ました。4人で車椅子ごと、信ちゃん(夫)を2階まで運ぼうというのです。それを・・・
信ちゃんは断固、拒否しました。
階段に手すりがあったので、手すりに掴まり休み休み、信ちゃんは無事階段を登り切りました。
それから半年ほど。いつもの仲間との山形(去年の9月には、長崎に行きました:バリアフリールームと車椅子用駐車場のあるホテル(5) - 車椅子旅行は楽しい!)への旅行で、最上川舟下りをすることになりました。事前に幹事の友人から、「車椅子OK」と聞いていたのですが、船着き場にスロープなどはありませんでした。
どうするかなと思っていると、粋な地下足袋を履いた船頭さんが二人、さっと信ちゃんの車椅子に近づき、「ほい、ほい、ほい」と掛け声をかけながら舟まで運んでくれました。自由が丘の事があったので、信ちゃんが何か言うのではないかと一瞬心配しましたが、信ちゃんは嬉しそうに運ばれて行きました。
その夜ホテルの部屋に戻り、「自由が丘の時には嫌がったのに、どうして今日はよかったの?」と聞くと、「船頭さんたちは体の出来が違うもの。安心して身を任せられる」
その時は、「そんなものか」と納得し、眠りに入りました。
それからは、階段に手すりがなく、車椅子に乗ったまま運んでも貰う以外方法がない時、拒否することはなくなりました。
信ちゃんは自由が丘の時には本心から、「安心して身を任せられない」と思ったのだと思います。ですが、同時に、それまで「車椅子ごと運んでもらった事がなかった」ので、「身を任す」相手が誰か、というよりも、「身を任す行為」そのものが怖かったのだと思います。
それまで、基本は一人で考え、一人で行動し、一人で目的を達成する。それが信ちゃんの日常でしたから。
それしか方法がないと分かっていても、素直に私を含めた他者に「身を任せる」のは、簡単ではなかった。私にも、簡単ではありませんでした。時間がかかりました。
で・す・が・・・車椅子旅行が、みなさんに自然に・感謝しながら「身を任せる」術を教えてくれました。
頭で考えるのではなく、予測するのでも、想像するのでもなく、体験する。
Shall we 車椅子旅行?
今はなき石垣島空港で、観光客を迎えるバスガイドさんたち。普通のおじさんだと、ちょっと遠慮しそうな時や場所でも、車椅子だとガンガン近づきます。
(2012年3月)