車椅子旅行であったとしても・・・
ここ数日、私の脳裏を離れない光景があります。
数日前に都下・府中のコンサートホールでお見かけした、私たちよりも少し高齢の、我が家と同じように男性が車椅子のお二人です。見惚れました。
私たちは
で書いたように、いわゆる「くじゃく夫婦」です。
美しい羽を広げるのはオス。メスはちょっとかわいそうなほど平々凡々な形と色をしていて羽は広げませんと、京都動物園(クジャクが羽を広げる時(保存版) | 京都市動物園
)が断言しています。
ですが、時折異変も起きるようで、ワルシャワ公園ではメスが羽を広げたそうです。
話が横道に逸れて行きそうなのでぐ~ぐともとに戻して・・・
くじゃく夫の信ちゃんはおしゃれさんです。車椅子旅行に出る前、下着や靴下も含めて、どのような組み合わせの着替えを持って行くか、時間をかけて考え、決めます。
我が家では信ちゃんがベッドに座ったまま自分で直接見て選べるように、Tシャツ・シャツ・ベストにセーター(編み物好きな私の、すべて手編み)・ズボン・カラフルなタオルマフラー(タオルマフラー・スポーツタオルタオル美術館公式通販サイト)はタンスに入れず、小売店のように種類別に縦積してあります。
一方私は、実用一筋。信ちゃんが車椅子生活になってからは、それに拍車がかかりました。
車椅子を押したり、車の後部に乗せなければならないなど、車椅子旅行はなかなかの体力勝負です。なので
1) もともとヒールは履かないが、パンプスも止めて、今は靴はぺったんこ
2) もともとパンツスタイルがほとんどだったが、今はスカートは履かない
3) もともと背が低いので長いコートは似合わないので着ないが、今は裾がからまるのが怖いので基本はショートコート。となりました。
4) もともとは長いショールが好きだったのですが、今はネックウォーマー(レディース ネックウォーマー 通販 : Amazon.co.jp)を愛用。めちゃ暖かくてお勧めです。
信ちゃんだけは上質でカラフルでおしゃれな格好をしてくれていれば、自分は質実剛健。食い気はあるが色気はない。それでいいと思っていました。
コンサート会場で車椅子を押していたのはお茶かお花の先生のように、着物を着慣れた上品な女性でした。車椅子に座った男性もまた、着物姿でした。
と、突然、着物の女性が車椅子を押して走り出しました。裾捌きも鮮やかに。
階下にあるトイレに行くには、長いスロープを降りる必要があります。
どうするのかなと見ていると、下りの定石である、車椅子を後ろ向きにはせず、自分がご主人の前にささっと移動して車椅子の方を向くと、両手で左右のアームパイプをがしっと掴み、そのまま後ろ向きでスロープを降り始めました。これまで何度も経験されていたのでしょう。これまた見事な裾捌きでした。
どうしてスロープを降りる時の定石である、車椅子を後ろ向きにしなかったのか。理由は分かりません。私たちも後ろ向きにはしません。信ちゃんが嫌いだから。
一枚の写真を見て、一枚の絵を鑑賞して、人は小説を思いつくことがあると言います。その夜私は、コンサート会場の着物姿のお二人を思い出しながら、布団の中でいろいろな物語を思いめぐらしました。
着物を着て車椅子を押したくなった?
いえいえ、そうではありません。
ただ、実用一点張りではない格好がしたくなりました。
次の車椅子旅行では信ちゃんに負けないくらい十分な時間をかけて、着て行くものを選び、組み合わせを考えましょう。
今回、着物姿の車椅子のお二人をお見かけした事で、私の気持ちが動きました。
「車椅子旅行は楽しい!」の中で、そんな出会いが作れたらいいな。ほんのわずかでいいから、誰かが動いて下さったら、やった!です。
チュニスの街角。私は何をしているのか。覚えていません。
(2002年1月) チュニジアにて
