車椅子旅行は楽しい!

パッケージ旅行とは違う、「個人でプランを立て」「自由な発想の」「安上がりな」「車椅子旅行のススメ」
「車を運転している時は、自分が左半身不随であることを忘れられる」と言う、17年前に脳出血で倒れ車椅子生活者となった夫との車椅子旅行は、幸せの宝庫です。

3年越しのドナウ川クルーズの旅の報告(3)

 ドイツでは日曜日、どの美術館や博物館も1ユで入場出来ます。ミュンヘンも例外ではなく、4日目の日曜日には美術館に行く事にしました。
 そこそこの距離があるので、最初はトラム(市電)に乗って行こうと思ったのですが天気も良く、ホームレスの方々のための無料食事給付のテントや、ミュンヘン大学工学部の脇をのんびり歩いていて気づいたら、美術館前まで来ていました。
 1時間近く歩いていたので美術館に到着しだい、即、トイレに向かいます。入って右手にきれいな車椅子用トイレがありました。初めての公共トイレです。何の疑問も持たず美術館の車椅子トイレを使ったのですが、それ以後、車椅子トイレが旅行の間中、最大の頭痛の種となるとは思ってもみませんでした。
 ですが、今日は車椅子トイレの話題ではなく、『びっくり」第二弾です。
 が、その前に、一言。美術館で大好きなイゴン・シーレの絵に出会えて、本当に幸せでした。

 出発前からミュンヘンの人気観光スポットの一つが、BMW本社だとは知っていました。
 信ちゃんはまだ十代で最初に買ったホンダ360以来、ホンダの車一筋です。ホンダ1300、CR-X,シビックと、ホンダの様々な車種を乗いで来ました。特に1300はお気に入りで、4台、乗り潰しています。
 現在は荷台のステップが低く、車椅子が乗せやすいので2代目のフリードに乗っています。一代目と同じように、ホイールは車体と同じ草色です。仕事柄トラックを運転して日本全国を回った事もあるので、車が大好き。当然、BMWの本社見学に行く事になりました。
 BMW本社の近くには水族館があります。事前に問い合わせをした所、日本の障害者手帳の提示で割引がして貰えると知り、それだけでも行かねばと信ちゃんと話し合いました。
 さて、ミュンヘンのトラム(市電)ですが、先頭車両からスロープが自動的に乗り場のホームに出て来る事は、ネット動画で事前に確かめました。日曜日に美術館に行く途中、ホステルから一番近い乗り場もチェックしました。なので行きは何も問題なく、終点駅まで到着。そこから水族館まで歩き、さらにBMW本社ビルへと向かいました。

 左手前の建物は「BMS博物館」、奥が本社ビルです。
 博物館の中は、このようになっていて、

信ちゃんは嬉しそうに電動車椅子で展示物を一つ一つチェック。私はベンチに座ってウトウトしながら、人の流れを見学していました。
 私は身長150㎝。海外のベンチに座るとまず足が床につかない。なので、足をブラブラさせざるを得ない。これが案外、疲れるのですよ。でも、本当に楽しそうに走り回る信ちゃんを見るのは幸せでした。
 行きは雨でしたが、BMW博物館を出た頃には雨も止み、気持ちよくトラムの駅へと向かいました。この写真は一般駅で、通常、歩道に隣接する形のホームです。

ですが、複数の系統が停車する大通りの駅は、下の写真のようになっています。
 往きは上の写真のようなシンプルな駅から乗車しました。ですが、止めておけばいいのに帰路は、途中で買い物をして帰ろうと考え、複数の系統のトラムが停車する、大通りの中央に設置してあるホームで乗り降りをする駅で降りる事に決めました。
 駅が近づき降車ボタンを押し、スロープを難なくホームに降ります。
 さて、歩道には、どう行けばいいのか? 見回すと、ホームの先端にエレベーターがありました。なるほど。それで地下に出て左右どちらかの歩道に出ればよいのだと理解。エレベーターへと向かいます。
 実際の降りた駅ではありませんが、そこは、こんな感じの駅でした。
 ホームの反対側は、柵になっています。なので、自由に歩道へとは車椅子では渡れません。

 

 今回はびっくり第二弾の話なのでここまで読み、もう想像がついた方もいるのでは? そうなのです。エレベーターが故障。作動していませんでした。張り紙もなければ何もなく、ボタンを押してもうんともすんとも言いません。乗客は慣れたもの、さっさと線路に降りて、左右どちらかの歩道へと渡って行きます。
 でしょ!』
 さあ、どうしよう。信ちゃんと結構真剣に、顔を見合わせました。で、トラムがそう頻繁に来ない事に気付き、一般の乗客と同じように線路の上を歩く事に決めました。
 「線路の上を歩く」と簡単に書きましたが、その時は結構「必死」でした。歩道へと続く道までの線路の距離は、そこそこありましたから。
 「トラムは来てないよ」と大声を掛けながら、最大のスピードで電動車椅子で線路の敷板の上を進むようにと信ちゃんを促します。スリル満点の瞬間。せいぜい1分ほどだと思うのですが、マジ、長かったです。かったです。
 無事歩道に着いた時には「やったね」と信ちゃんと手を合わせました。
 あ~あ、疲れた。あの時は「びっくり」に「怒り」に「安堵」。いろいろな思いが押し寄せていましたが、今となればいつもと同じ。「面白い体験だった」
 大通りからホステルまでの間は、ちょっとしたアラブ人コ街になっていました。
 夜ご飯を買います。
 冒険の後の、ケバブです。わずか6ユーロ。充分二人分あります。おいしかったです。

(2022年4月26日 ミュンヘン)
 ところでBMWの由来を最後に。
 Bはドイツ南部のバイエルン地方。
 Mは自動車のモーター。
 Wは働く工場。
 でした。

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