なぜ車椅子旅行に行くのですか? 大変でしょう?
今、改めて考えています。
セッセセッセと節約し、準備を重ねて出発した車椅子旅行。楽しいだけではなく、怒りや戸惑いや憤りを覚える事も多いのに・・・
私たちはなぜ、あらゆる機会を捉えて車椅子旅行に出かけるのだろう。
全国を車で回るのが仕事の一部だった信ちゃん(夫)は、「日常の仕事(ルーティーン・ワーク(https://welq.jp/6389))の延長だから」と夫婦での国内旅行に興味を示しませんでした。走行中、道端でおばさんが売っていた松葉ガニを仕事の現場で食べたら、めちゃ美味しかったなど聞くと「私にも食べさせろ」と連呼したものです。
40歳も過ぎ、少し生活にゆとりが出始めた頃「ゲルニカ(ゲルニカ (絵画) - Wikipedia)を見に、スペインに行きたい!」と誘ったら、あっさりOKが出ました。ちょうど祖母に続いて父が亡くなり一人になった母を元気づけたく誘ったら、こっちもあっさりOKでした。
ヨーロッパの絵画・歴史・音楽にむやみと詳しい母との三人旅は、実り多いものになりました。
「来年も行こうね」との母の言葉に、最初はあいまいに答えていましたがその後、年に一度の三人の海外旅行が定番となりました。そして、信ちゃんが車椅子になり、海外旅行が出来るようになった8年前、自然に三人での海外旅行が再開しました。
最初の海外車椅子旅行は安・近・短な「台湾」(世界のバリアフリー事情/台湾)をお勧めしますが、「ラスベガス」もいいですね。ということで、私たちの初車椅子海外旅行はラスベガスでした。
空港・ホテルなどで荷物番をしたり、時には車椅子を押したりと積極的に協力してくれた母も、私のケアが必要な歳となり、三人旅はここ数年ストップしています。残念ながら再開は難しいでしょう。
車椅子旅行、大変でしょう?
当・た・り・前です。大変です。ですが、一般の旅行者には絶対に想像出来ない状況や出会いに何度も巡り合えました。東京駅南口にある車椅子用待合室(東京駅 身体障がい者用待合室)から東京駅新幹線ホームへの通路に案内してもらう時、いつも車椅子でよかったと信ちゃんと「ウハ、ウハ」言っています。
前回書いた、車椅子旅行の「効用」(福島車椅子旅行の「こうよう」 - 車椅子旅行は楽しい!)の他にも、多くの「学び」を経験してきました。「贈り物」もたくさん貰いました。
ですが、それを一つ一つ旅先で意識してこなかったし、その必要もないと思っています。
信ちゃんは室内・屋外を問わず、ホテル・レストランなど初めての場所で、どうしても車椅子から降りて足の装具と杖で歩かなければならない時、必ず言います。
「先に見てきて。僕に歩けるかどうか」
もちろん、こりゃ駄目だというケースもありますが、大半は
「大丈夫だよ!」
そこで信ちゃん、歩き出すのですが、これまた必ずいつも叫びます。「頭の中では大丈夫だと思っているが、足が動かない!」
だが行きはダメでも帰りには、信ちゃんの足は動く。
「ほら、大丈夫だったでしょ」
「そうだね」
仕事でも恋愛でも旅でも、初めてはいつでも怖いです。大変です。ドキ・ドキものです。最初から難なくこなせる事は挑戦ではなくルーティーン・ワーク化した行為であり、そこに驚きも達成感も快感も高揚感もない。あっても僅か。私は、そう思います。
私たちの車椅子旅行の内容も、どんどんルーティーン・ワーク化しています。それは避けられません。
今回宿泊した「かんぽの宿いわき」([公式]福島 いわきのホテル・温泉 | かんぽの宿 いわき)は初めてでしたが、車椅子旅行者にはほぼ完ぺきな設備で、居心地は満点に近く、信ちゃんは「また来ようね」と大満足でした。ですが、初めてだが初めてではない「お約束」の空間に、私は「楽だ!」とのんびりしたものの、松前の宿(車椅子旅行の理想の宿とは:2016年北海道編(3) - 車椅子旅行は楽しい!)でのような幸せは得られませんでした。
「かんぽの宿」もよかったけれど、「松前の宿」と比べてどうと信ちゃんに聞くと「どっちも好きだけれど、『松前の宿』の方が忘れられない」と言ってくれました。
なぜ私たちは、車椅子旅行に出かけるのか。
ルーティーン・ワーク化している予定調和の車椅子生活からは得られない「驚き・達成感・快感・高揚感」を求めているから車椅子旅行をするが、こ・た・え?
本当はよく分かりません: 1)東京に直下型地震が来る前に見たいものを見ておきたいから。2)車椅子の旅。大変なのに、お偉いですねと褒めて欲しいから。3)各地の美味しいものが食べたい食いしん坊だから。4)友人・仲間はお互いそろそろいい歳なので、元気でまだ思考力が作動している間に会いたいから。
いえいえ・・・一番正直な答えはこれです。
車椅子旅行は楽しい!
脱ルーティーン・ワークを目指して車椅子旅行、してみようかな。
そんな風に一瞬でも思われた方、ぜひご一報下さい。ご一緒に、考えましょう。安上がりで自由で楽しい車椅子旅行を!
母です。目に留めるものが私と違い、驚かされます。信ちゃんはまだ車椅子ではないので、視点が高い。
(2002年:チュニジア・バルド博物館(バルドー博物館 クチコミガイド【フォートラベル】)
