車椅子旅行は楽しい!

パッケージ旅行とは違う、「個人でプランを立て」「自由な発想の」「安上がりな」「車椅子旅行のススメ」
「車を運転している時は、自分が左半身不随であることを忘れられる」と言う、17年前に脳出血で倒れ車椅子生活者となった夫との車椅子旅行は、幸せの宝庫です。

信ちゃんのサンラータン

 年明けすぐに新潟出身の親友まことちゃんから、銀座でランチをしないかと嬉しい誘いがありました。昼間に銀座に出掛けるなど、何年ぶりでしょう。約束のレストランの前で待ち合わせたのですが、ホームページを見る限り営業しているはずなのに、閉まっていました。「本当においしいのよ。また来ようね」という彼女の言葉に、一応、店を紹介をしておきます。燕三条は、義妹さんの故郷だそうです。

 近くで手ごろなランチを食べた後、銀座らしい所でお茶をと、銀座ウェストに行き、3時間ほど話し込んでしまいました。


 ・そんなに話し込んだか、ですか?
 お互いの近況を報告し合った後、「読んでくれている?」と聞いた時です。ノー天気に、てっきり「楽しく読んでいるよ」との答えが返ってくると思いきやまことちゃんがずばり言いました。
 「なんだかきれい事ぎる
 
 「あなたたちの車椅子旅行が楽しいのは分かるけれど、最初はそんな事なかったよね」
 信ちゃんが倒れた翌日に病院に来てくれたまことちゃんは、これまでの私たちの13年の軌跡を熟知しています。
 「まあね」
 「信ちゃん(夫です)が倒れてから、どんな葛藤や体験を積み重ねて来たたのか。車椅子旅行が楽しめるようになったのは、ドタバタがあったからでしょう。その辺りが伝わって来ないのよ。結構じゃない」
 私には、返す言葉がありませんでした。
 そう言われれば最初の数年は車椅子旅行から戻ると、旅先でのを彼女にだらだらと長電話したものです。


 信ちゃんが倒れる3年ほど前、まことちゃんの夫はがん宣告され、丸山ワクチンを始めとしてさまざまながん治療を行い、玉川温泉に通いました。


(玉川温泉バリアフリー情報)


 そして数年前、癌細胞が消えたそうです。


 「? 最初の診断が間違っていたのではないの?」と信ちゃんと二人でちゃかしたりもしましたが、親友が献身的な介護をずっと続けている事は承知しています。区の農園を借りて野菜を育て、味噌は手造り。徹底的な食事療法です。私もそれを見習い、特訓を受けて、信ちゃんの食事作りをして来ました。我が家で使用する味噌はすべて、まこと特製です。


 「そもそもをどうして書き始めたの?」
 「ケアマネージャーに、『お宅はいつ伺っても楽しそうですね。私が担当している方々はどうしても、内向きになります。何かきっかけがあれば旅行をしたいと、みなさんおっしゃるのですが』って言われたの。」
 「それで」
 「って手間もお金もかかると思いがちだけれど、上がりに自由に、好きに出来るのよ。割高のパッケージ旅行に参加しなくても、ね。信ちゃんが倒れる前からずっと安上がりな自由旅行を楽しんで来た経験を基に、私たちが実践してきた自由な車椅子旅行体験をみんなに読んでもらい、一歩を踏み出したいと思っている方たちの背中をちょっと叩けたらいいなあって思ったの」 


 ですが「のど元過ぎれば熱さを忘れる」とはよく言ったもの。知らないうちに、こんなこともやれた、あんなこともやったと言う、自慢になっていたのかなあ。


 実は最近、「のど元過ぎて熱さを忘れいた」私に、信ちゃんが昔を思い出させてくれました。おせちにもそろそろ飽きたと、近くのイオンにお昼を食べに行った時の事です。


 信ちゃんは車椅子になる前から、「揚州商人」サンラータンが大好きでした。

 車椅子になって1年近くは外食が出来ませんでした。何を食べても味が濃過ぎたのです。「塩を少な目にお願いします」こちらのそんなリクエストに、ほとんどの店が快く対応して下さいましたが、出された料理を信ちゃんは半分も食べられませんでした。「塩っ辛い」と言って。
 そんな中、揚州商人のサンラータンを信ちゃんはおいしそうに最初から食べました。
 信ちゃんはどうやってべたか?
 お椀にお湯を貰い、サンラータン・スープから麺を出し、それを湯で湯がいて食べたのです。その合間にほんの時々、サンラータン・スープを飲みます。「おいしい。おいしい」と言いながら。
 今回もお椀にお湯を貰い、スープから麺を取り出し湯がいて食べました。
 一瞬、「そんな食べ方しないでよ」と言いそうになりました。


 倒れて、リハビリ病院に6か月滞在。車椅子を押して近所に出掛ける事が出来た時の喜び。外食が出来た時の喜び。信ちゃんがどんな食べ方をしようとも、気にならなかったとは言いませんが、二人の幸せな世界で食べていました。料理はすべて小さく切り分け、めちゃめちゃ時間をかけて食べていました。私たちには子供が居ないので、「神様が私に子供の面倒を見る幸せを下さったのだ」と感謝しながら食べていました。


 を迎えました。
 今一度、どうしてを書き始めたのか。初心に帰り、これまでの道のりを振り返りたいと思います。(続く)


 見た目はあまりおいしそうではありませんが、典型的なイギリスのパブのお昼の定番。Fish & Chips.プリマスのこのパブの魚はタラで、とてもおいしかったです。豆もものすごい色をしていますが、自家製でした。

(2010年8月 英国鉄道旅行で立ち寄った港町プリマス)

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