スパイダースプリント
「新し物好き」で、ネット・ブラウジングが大好きな私。
みんなの知らない(はず)の事を、みなさんに「知ったかぶり」でおしゃべりするのが好きです。日々自分が発見したと信じ、信ちゃん(夫です)は知らないだろうと(勝手に)思い込んでいる事をチョコチョコ信ちゃんに披露しては、一人で悦に入ってます。
そんな私ですが、数日前、もっとアンテナを高く立てて、もっともっと色々な事を知りたい。「あ~あ、世の中は広いなあ。私が知っていることなんて所詮、氷山の一角」と思う体験をしました。
信ちゃんの仕事仲間に、右半身不随の友人がいます。信ちゃんと同じ、硬直型の麻痺です。彼は倒れてから4年目ですが、若い事もあって回復が早く、信ちゃんは人に紹介する時、
「彼は僕のリハビリのライバルなんだ」と嬉しそうに言います。
信ちゃんは幸運な事に左半身不随なので、右手が使えます。ですので、倒れてから比較的早い段階で一人で食事が出来るようになり、車の運転もするようになりました。会話にも最初の数か月は二人で毎朝「あ・い・う・え・お」と発声練習をしましたが、今ではまったく不自由していません。ただ10年以上たった今も、左側に料理を置くと、注意を喚起しないと手を付けずに残してしまう事が多いです。
信ちゃんのリハビリ・ライバルは、信ちゃんより多少軽い右半身不随なので、しばらくは車椅子でしたが、今では杖を使い、空いている時間帯ならば、一人で電車に乗れるまでになりました。
羨ましい! 羨ましい! 羨ましい! 羨まし~い!です。
会話は、話初めは辛そうですが、しばらくするとエンジンがかかり滑らかになります。
信ちゃん、家の中では杖を使ったり、使わなかったりで歩きますが、公道では車椅子が離せません。
さて、わがリハビリ・ライバルが、どのような経緯で始めたのか、聞き忘れたので今度会ったら確かめましょう。彼は右手の機能回復を目指し治療方法として、
川平療法 を選択しました。
ネット・オタクの私は、半身麻痺という言葉をネット上で検索しまくり、2005年の秋の初め、川平療法の存在を知りました。どんな療法でも試してみたい。そう思っていた私には、川平療法はとてつもなく魅惑的でした。
今ではいろいろな場所で川平療法の講習会が開かれるようになりました。ですが、信ちゃんが倒れた2005年の秋には、診療は鹿児島まで行かないと受ける事が出来ず、それも最低一週間の滞在が条件でした。講習会は一般人には公開されていませんでした。
当時の私たちにはもちろん、鹿児島で一週間以上滞在する。そんな時間も、金銭的な余裕も、そして何よりも、未知の治療にかける心の強さがありませんでした。
そこで、大枚6,500円を投資して川平療法の本を購入。読み始めたのですが、本を前にして途方にくれました。難し過ぎて訳が分からない。あの本は今、いずこに?
ともあれ、ライバルさんは地道な努力を重ね、会うたびに手が開くようになって行きました。今では、鉛筆なら持ち揚げられると言います。凄いですね。
そして、そんなライバルさんが数日前に会った時、私たちが聞いたことも見た事もない器具を披露しました。それが、スパイダースプリントです。
田邊製作所: 田邉製作所
信ちゃん、早速試してみました。僅かながら指が入りました。めちゃめちゃ興味が湧いたようで、自宅に戻り2人で、スパイダースプリントをネットでチェック。これまで一度も耳にした事がないのに、結構、いろいろなサイトがあります。
な、なんと、作り方のサイトもあります: http://tokyo-hands.com/cms/wp-content/uploads/2015/05/bfba2f6d073d6d13fb6aff40d7a5cdf5.pdf
ですが、ライバルさんのスパイダースプリントは、田邊製作所のものとは指先が異なっていました。指がはめやすいように、「わ・っ・か」が指先部分に付いています。親指の所にも、親指が痛くならないように、ガーゼが挟まれています。
ライバルさんが通院している病院の先生が自分で作られた、特製品でした。
信ちゃんは早速、訪問リハビリテーションの理学療法士に、スパイダースプリントの話をしました。彼女は、「初耳です。知りませんでした」と答えましたが、信ちゃんの「僕にも作って貰えるかなあ」と何気ない問いかけに、「仲間と話してみます。とても興味深いし、作れそうだ」と言いました。
やったね、信ちゃん。
どんな結果が待っているか分からないけれど、スパイダースプリントが私たちを新しい世界に導いてくれるはず。
ライバルさんのスパイダースプリントをほんのしばらく貸りて付けただけでも、その夜の信ちゃん。「足の感覚がなんだかいつもとちょっと違うよ」
それがたとえ、単なる思い込みであろうと、「ちょっと違う」と思うことは、とっても大事。理学療法士さんたちの成果を楽しみに、幸せな年の瀬を迎えましょう。
信ちゃんとの別れ際に、ライバルさんが言いました。「スパイダーマンが登場したのなら、バットマンも登場しなけりゃね。これ、バットマンって言うんだよ」と、杖を机などに固定出来る杖ホルダーを見せてくれました。
信ちゃん。「映画はバットマンの方が好きだけれど、今回はスパイダーマンがいい」だそうです。
みなさま、よいお年をお迎えください。
2017年も最後なので、ちょっと毛色の違う写真を。ラスベガスのホテルのライドの案内嬢です。信ちゃんは脳出血で倒れる前よりも車椅子になってからは、臆せずに美人を見つけると近づき、ニコッと笑って写真を撮るようになりました。
(2007年1月 ラスベガス)
