ManchesterとSwedenの楽しい車椅子旅行(1)
約2週間の、30年ぶりの再会となる友人
訪問の英国マンチェスター。それに40年ぶりのスエーデンのヴィスビュー(「魔女の宅急便」の舞台)とストックホルムの楽しい車椅子旅行から、先週戻りました。
今回も楽しく、美味しく、幸せな車椅子の旅でした。信ちゃん(夫です)も私も、2キロ太ってしまいました。ですが、どんなに事前の準備をしても車椅子の旅行は「想定外」の事態のオンパレードでもある事を改めて認識、というか肝に銘じさせられた旅でもありました。
羽田から、ヒースローで乗り換え時間も含めて約15時間後にやっとたどり着いたマンチェスター。空港まで迎えに来てくれている30年ぶりの友人と、感激の抱擁!!! のはずでしたが・・・
荷物をピックアップするところに行くと「ヒースローに車椅子を積み忘れた」と言われました。
なんですって!?!?
「次の便に乗せます」
「今日はこのまま、空港の車椅子を使って下さい」
「明日一番で、指定の場所までお届けします」
ちょ、ちょっと待って・・・・
「次の便には絶対に乗りますね」
「その予定です。通常、そのように手配されます」
「次の便はいつ到着しますか」
「2時間半後です」
15時間、ほとんど寝ていない私の頭が、ぐるぐるぐるぐる回りました。
「待ちます」
簡単な決断ではありませんでした。次の便に乗せるであろうことは、90%確かだと思いながらも、100%保証がある訳ではありません。係りの人の名前を書いた、荷物の受取書の入った封筒を手に、いつまでも友人を待たせられません。心配しているでしょう。がらがらとトランク2つを押しながら、係りの人に押して貰う車椅子に乗った信ちゃんと、出口へ向かいました。
友人は、私の顔を見て満面の笑みを浮かていましたがすぐに、私たちの沈んだ雰囲気を察知して、感激の抱擁ではなく、優しく抱きしめてくれました。「どうしたの」
状況を説明すると、「分かったわ。お疲れ様。2時間半待ちましょう。信ちゃん久しぶり。大変だったわね」と、車椅子の前でひざまずいてくれました。
疲れと思わぬ展開に、もうろうとしていた信ちゃん。ほとんど友人の問いかけにも反応せず、ぼそっと言いました。「東京に帰りたい」。出来る事なら私も空間瞬間移動したかったです。
空港の待合エリアは薄暗く、人もまばら。開いているのはソーセージパンが2つ残ったカフェのみ。まずはそのソーセージパン2つを温めて貰い、それぞれ飲み物を注文。いつもなら車椅子から椅子に移るのですが、信ちゃんは空港御用達の大きな車椅子の中に埋もれたまま、各自の取り分のソーセージパン半分に食いつきました。「お腹が空いた」
そうなのです。人はどのような時にもお腹は空くのです。
3時間ほど経ち、信ちゃん愛用の電動車椅子が到着しました。今日、いつも電動車椅子の整備をしてくれている担当者が「どうやったら、こんな風に歪むのか。電動シャッターで上から押すなどしない限り、人の手では無理だ」と驚くほど、私が手動にした時に掴んで押す、後ろの右側のハンドルが曲がっていました。
友人はそれを見て、「車椅子の機能に問題ないなら、今夜は信ちゃんには言うのは止めましょう」と私に確かめてから、信ちゃんに明るく大きな声をかけました。
「さあ信ちゃん。帰りますよ」
友人の家は、私たちが昔から好きだと知って用意してくれていたカレーの匂いがかすかにしていました。その事を言うと「カレーは1日置いて食べた方がきっとおいしいよ」と言ってから、「信ちゃん、ゆっくり休んでね」と、私たちのために空けてくれた自分の部屋へと案内してくれました。「私はキッチンの上の屋根裏部屋で寝るから」
信ちゃんは倒れるようにベッドに横たわりました。上着だけは脱がせましたが無理に着替えさせず、シャツの胸を開け、ズボンを緩め、靴を脱がせて足の装具を取り外し、いつものように固まった左足と脚をマッサージしました。信ちゃんはあっと言う間にスースー寝息を立てました。
友人から一通り、アパートの中の説明を受けてパジャマに着替えてベッドに横になった時には、夜中の2時近くになっていました。
ヒースロー空港で英国航空が、信ちゃんの命綱である大事な電動車椅子を積み忘れ。今回の旅は最初からオッたまげましたが、良い事もあったのですよ。
30年ぶりの友人が、変わらず冷静で優しく思いやりにあふれていた事。さすが、われらが友です。
そ・し・て・・・・・
ほぼ完徹状態で寝たため、翌日起きた時には信ちゃんも私も頭スッキリ!!!
以後まったく、「時差ボケ」に悩まされませんでした。
これはロンドンの写真ですが、マンチェスターでもこのような、誰でも自由に借りて乗り降りできる自転車がいろいろな場所に置いてありました。
(2008年 イギリス鉄道旅)
