車椅子旅行の贈り物: ひろみさんの不動産屋さん
コンビニの前で立ち話をしながら、ひろみさん(車椅子旅行の贈り物: コンビニの前でひろみさんに会う - 車椅子旅行は楽しい!)の口から出たのは、
「信ちゃんと同じように脳出血で倒れたが、現在はもう仕事に復帰している人が身近に居るわ」
それは、天・か・ら・の声でした。
その人は、「一戸建ての土地探しから世話になった」ひろみさんの不動産屋さんでした。
その不動産屋さんが信ちゃんと同じように脳出血で倒れ、リ・ハ・ビ・リ・を続け、今は自分で車を運転して仕事をしている、と言うのです。
「自分たちの経験をみなさんに役立てたいとい・つ・も・言っていて、お二人のようなご夫婦を喜んでサポートしてくれるはず。いろいろ相談に乗ってもらったらどうかしら。明日にも会うので、信ちゃんのことを紹介しておくわ。後で、住所や連絡先を渡すわね」
藁をも掴む思いの私は、とにかく、その方に会いたい!
コンビニから自宅に向かう間、ずっと「会わなきゃ。会わなきゃ」と念仏のように唱えていました。
会って、自分自身で信ちゃんは回・復・出・来・る・と信じることが必要でした。
その夜戻るとひろみさんから、不動産屋さんの連絡先のメモと一緒に、お子さんのものと思われるお弁当箱が袋に入って、ドアノブに下げられていました。「ちゃんと食べなきゃだめよ」というメモと共に。
夜食としてわざわざ作ってくれたものだと、見ればすぐにわかるお弁当でした。ひろみさんはそれから何度も、そうやって差し入れをしてくれました。ドアノブにポンっと、スープの入ったタッパーがぶら下がっていることもありました。
その日も、その翌日に信ちゃんが一般病室に移ってからも、ひろみさんの不動産屋さんのことを忘・れ・て・はいなかったのですが、一瞬、一瞬がばたばたで、自分の方から連絡する余裕はなく、時間が過ぎて行きました。
そ・し・て・・・コンビニの朝から三日目。信ちゃんが倒れてあと一日で一週間という朝、何の前ぶれもなく、不動産屋のご夫妻が揃って、信ちゃんの病室に入って来られました。
金沢の秋も今日の東京のように、雨上がりでした。
(2008年11月)